2019年9月/現場で感じる収益不動産市況

不動産投資と収支
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活発に売買が行われたが融資は・・・

本記事は公開1~2ヶ月前に配信した不動産投資メルマガの抜粋です。

いよいよ増税となりますが、9月末という節目もありこの1ヶ月は売買が活発に行われたように感じます。

他社ではオープンハウスをはじめとした業者売主物件の成約が増加しましたし、当社でも9末決済の案件が複数ございます。その中にはX銀行による融資を受けての販売決済もあり、今後の融資も期待したいところです。

一方で4月〜6月の3ヶ月間の融資動向は予想通り厳しく、6月〜9月の3ヶ月も昨対比では減少していると思われます。

日銀の貸出先別貸出金資料より作成

一部上場不動産会社が購入しようとした際、遵法性に疑義がある物件への融資で否決が出た為、現金で買ったという話もありました。遵法性や賃貸需要など、物件に対する見方は引き続き厳しいと感じています。

しかしながら、10億以上の大型物件や都心のビルなどは品薄状態が続いています。オフィス賃料上昇及び空室率低下などの好材料が継続しているのが要因です

REITが好調

東京REIT指数も順調に伸びており、節目の2100を超えてきました。

予想分配金利回りが約3.6%と東証一部の予想配当利回り2.6%より高い事も魅力です。

グローバル視点の経済動向

また、グローバル化とIT(情報技術)化の浸透で世界中の製品・サービスの価格や需給の情報が瞬時に伝わり、世界の物価はすぐに平準化されるようになりました。

その結果、世界的に低インフレ、低金利が続いています。世界的低金利の影響で社債発行額が増加しており、マイナス利回りの債券も増えています。

「金利の低下」は、別の言葉を使えば「債券価格の上昇」であり、過剰債務の膨張が金融のひずみを拡大している事とも表裏一体です。

米連邦準備理事会(FRB)によると米企業の借金は過去最高(15兆ドル超)に達したようです。

借り入れしやすい金融環境が本来は破綻していたはずの企業を延命させてきた一面もあり、国際決済銀行(BIS)は、主要国の上場企業の12%が「ゾンビ企業」だと分析しています。

日本でもCLO保有者が増えている

低格付け融資のレバローンはCLO(ローン担保証券)に形を変え、日本を含む複数の投資家が保有しています。

2007年のサブプライムの住宅ローン担保証券の発行残高は1兆7800億ドルでしたので、それには及ばないものの、CLOも6000億ドルを超えてきました。CLOはリーマンショック級のリスクを含んでいる金融商品と言う専門家もいますので、今後の動向に注目です。

日本の株価は・・

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が低格付け債に投資できるよう基準緩和したこともあって株価は依然として底堅いですが、売買代金が細っていることによって価格変動に対する耐性が弱くなっている点には留意しておく必要があるのではないでしょうか。

9月レインズ成約事例

続いて好評の、9月レインズ成約事例についてご紹介させて頂きます。

2019年9月 レインズ成約事例(抜粋)

①谷塚駅5分  令和元年 RC造
  売出価格3.1億⇒成約価格3.1億
  土98坪  建物154坪
  成約利回り5.0%
   ポイント:新築RC、幹線道路沿い
   留意点:利回り5%、やや間口狭い

②海老名駅10分  平成11年 RC造
  売出価格2.79億⇒成約価格2.73億
  土地248坪  建物434坪
  成約利回り6.9%
   ポイント:希少な海老名、土地250坪
   留意点:オーナー住戸付

③馬込駅12分 平成18年 RC造
  売出価格1.46億⇒成約価格1.35億
  土地53坪  建物85坪
  成約利回り6.5%
   ポイント:平成18年RC、EV無し
   留意点:私道接道

④練馬駅13分 平成12年 RC造
  売出価格1.36億⇒成約価格1.36億
  土地約70坪  建物約82坪
  成約利回り7.0%
   ポイント:外観◎、平成12年RC
   留意点:容積100%
  
⑤茗荷谷5分 昭和49年 RC造
  売出価格2.16億⇒成約価格2.16億
  土地88坪  建物191坪
  成約利回り約7.3%
   ポイント:茗荷谷5分、全戸南向き
   留意点:旧耐震⇒残存2年

⑥朝霞駅15分 平成3年 S造
  売出価格1.6億⇒成約価格1.4億
  土地200坪  建物254坪
  成約利回り11.7%
   ポイント:土地200坪、利回り10%以上
   留意点:残存6年、稼働率70%

郊外・築浅のRCであれば7%目安

9月は取引の多かった6月には及ばないものの、お盆のあった8月と比べて持ち直しています。レインズ在庫は先月の1064件からわずかに微増程度で横ばいです。

意外にも満額での成約が多く、当社の取り扱いが多い郊外・築浅のRCであれば7%が一つの基準になっています。やはり融資機関によるキャッシュフローを考慮し、その結果が利回りに反映されていると感じます。

私の査定価格との乖離

また私の査定価格と乖離があったのは、①の谷塚の新築RCと⑥の朝霞台の平成3年S造です。

再掲

①谷塚駅5分  令和元年 RC造
  売出価格3.1億⇒成約価格3.1億
  土98坪  建物154坪
  成約利回り5.0%
   ポイント:新築RC、幹線道路沿い
   留意点:利回り5%、やや間口狭い

⑥朝霞駅15分 平成3年 S造
  売出価格1.6億⇒成約価格1.4億
  土地200坪  建物254坪
  成約利回り11.7%
   ポイント:土地200坪、利回り10%以上
   留意点:残存6年、稼働率70%

①はいくら新築とは言え、谷塚10分で5.0%で買う方のイメージが湧かず、

⑥は逆に、朝霞台は土地も広いので11%弱でも決まるのではと思っていました。

どちらも場所などの詳しい立地が不明なのでなんとも言えない部分がありますが、不動産という資産の値付けがいかに難しいかを痛感します。

もっと価格が下がったら買いたいという声は多くありますが、株式や債券などの他の代替商品の利回りも下がっていることを考慮しますと、皆が買いたいと思っているうちは下がってこないのではと思われます。

購入するタイミングはもちろん大切ですが、不動産ならではの個別性、資産性、収益性に着目することがポイントだと考えます。


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