2021年は8月の西日本を中心とした大雨や、12月の北海道や西日本を中心とした大雪など、「統計開始以来」という文字をニュースで見ることが多い1年でした。
自然災害を前に大きな味方となるのが「火災保険」による備えです。
そこで今回からは、
- そもそもの火災保険の基本
- 最近の自然災害多発を受けた損害保険各社の動き
など、火災保険に関する網羅的な情報をお伝えいたします。
前編となる今回は、火災保険の基礎知識編です。
火災保険の基礎
まず最初に、「補償対象」「補償範囲」という2つの視点から火災保険の基本を取り上げます。
賃貸物件における火災保険の補償対象は「建物」と「家財」の2つに大きく分類されます。
物件のオーナー様は「建物」、入居者様は「家財」の保険に入ることが一般的です。
内容については読んで字の如くですが、建物は建物本体と本体に付随するもの、家財は建物の中にある家具や衣類などを指します。
ちなみに備え付けの
- エアコン
- 照明
- 給湯器
- インターフォン
などは建物本体に付随するものとして家財ではなく建物扱いとなります。
そのため保険会社の商品にもよりますが、物件のオーナー様が建物に対しての保険に「電気的・機械的事故補償特約」を
付けている場合だと、エアコンの故障(経年劣化を除く)でも保険金が受け取れるケースがあります。
基本補償とオプション補償を組み合わせる
火災保険の補償範囲については、「基本補償」となるベースの部分と「オプション補償」というその他の部分の組み合わせによって決定します。
補償範囲も保険会社さんによって違いはありますが、どの会社さんでも
- 火災
- 落雷
- 破、爆発
- 風災、雹災、雪災
- 水濡れ
- 盗難
などが基本補償となっており、
そこに先ほど申し上げた「電気的・機械的事故補償特約」などのオプション特約が上乗せされるイメージです。
地震保険も火災保険のオプション的位置づけ
ちなみに「地震保険」についても、火災保険の1つのオプションという捉え方が分かりやすいと思います。
長くなるため詳細は割愛しますが、地震保険の特徴としては
- 火災保険とセットでの加入が必須
- 保険会社と政府の共同運営
- どの保険会社でも保険料や補償は同じ
といったものが挙げられます。
勘違いが起こりやすい点として、「火災保険と地震保険の境界」があります。
地震保険は地震に起因する損害をカバーするための保険となります。
そのため
- 地震による火災
- 地震による津波
などは地震保険の補償対象であり、火災保険単独に加入している場合は補償が受けられないことには注意が必要です。
火災保険料の算出基準
続いて火災保険料が何を基準として計算されているのかについて確認してみます。
建物本体の特徴のうち火災保険の料金に影響を及ぼすのは、
- 築年
- 構造
- 立地(ハザード)
といったものがあります。
例えば構造を例に挙げると、「一戸建て」か「マンション(共同住宅)」か、その躯体の構造や耐火性能はどうなっているかによって下記のようなフローチャートで分類されています。

端的に述べると「木造の戸建て」が料金が一番高く、「コンクリ―トや耐火建築物の共同住宅」が安くなります。
水災リスクも保険料に考慮される
また2020年8月から、物件売買時の重要事項説明において「水防法に基づいたハザードマップ」を基に物件の所在地を説明することが義務化されました。
各保険会社も水災リスクに応じた保険料の設定が検討され始めています。
実際に今年の6月に開かれた金融庁の有識者会議では、保険料の地域差の在り方についての議論が行われました。
2023年度以降を目途に、各損害保険会社も保険料に差をつけ始めることが予想されています。
ちなみに大手に先駆けて既に「楽天損害保険」は、2020年4月から独自に水災リスクによって地域を分け、4段階のリスク設定で保険料を算出しているとのことです。
火災保険料の保険金額
ここまで述べてきた建物の特徴に加え、保険金の支払い上限となる価格(保険金額)によっても保険料は大きく変動します。
保険金額は契約の際にある程度自由に設定することができます。
一般的には「新価」「時価」という2つの選択肢がありますが、「慎重に備える」場合には現時点において物件を新たに建築・購入する際の価格(新価)に合わせることが推奨されます。

https://www.sompo-japan.co.jp/knowledge/basic/life/contents2/
例えば上記の図のように築20年の物件の保険金額を考えるとき、新価だと2,500万円、時価だと1,500万円が保険金額となります。
保険金額が低い方が当然、支払う保険料の額も少なくなりますが、
例えば物件が全壊した際のことを考えると新価は最大2,500万円、時価は最大1,500万円の損害保険金を受け取れることとなります。
つまり物価の変化にも依りますが、時価(経年劣化を考慮した価格)で保険に加入した場合は、全壊の際に同様の物件を新築できない可能性が高いです。
当社プラン・ドゥがメインに取り扱う中古RCマンションの場合、火災によって全壊する可能性はほぼ0に等しいので、実際は時価寄りの保険金額をご提案するケースが多いです。
ここまで火災保険の補償対象・保証範囲と、保険料に影響を及ぼす要素について簡単に確認してきました。
次回は最近の自然災害を受けて、火災保険の申請状況や保険料はどのような傾向をたどっているのかという、トレンドについて確認していきます。
