【個人or法人】税率面での比較

収益最大化の不動産

今回は、所得税や法人税の単純な税額の比較という観点から見ていきます。

目次

【個人】所得税

 この話をする前に、改めて個人の所得税額がどのように計算されているのか確認します。

 個人の所得税額は以下のような式で求められます。

合計所得金額(不動産所得+給与所得+その他の所得)
 ―所得控除額(社会保険料控除や扶養控除など)
  =課税総所得金額


課税所得額×税率所得税額等(所得税及び復興特別所得税)
※所得税額から、税額控除や年末調整によって最終的な税額は変動

では、以上を踏まえて所得税の税率表を見てみましょう。

当たり前のことですが、所得が高くなればその分税額も上がっていきます。そして実際には所得税の他に、住民税が10%課税されます。

つまり収入が4,000万円を超える場合、所得税+住民税の税額は55%となり、総所得の半分以上の税金を納税することとなります。

【個人】不動産所得に控除は無い

注意する点としては、「給与所得には控除がある一方で不動産所得にはない」という点です。

給与所得は、給与収入が年間額面で1,000万円を超えている場合、220万円の給与所得控除が差し引かれます。つまり、額面で年収1,000万円の給与収入がある方の場合、課税対象となる給与所得は1,000万円―220万円=780万円となります。

一方で、不動産所得において「控除」と呼べるものは、「青色申告制度(詳しくは次回)」の最大65万円程度しかございません。

つまり「不動産所得」が増えると、課税総所得金額が大幅に上がることになるのです。

【個人】不動産売却は累進課税にはならない

個人の所得は、

  • 不動産所得や本業所得のように合算して税額が計算される所得
  • 譲渡所得(売却益・売却損)のように単独で税額が計算される所得

の2つがあります。

個人で不動産を売却した時、所得は給与所得と合算されたり累進課税にはならず、税率は一定になります。(短期譲渡は約40%、長期譲渡は約20%)

【法人】法人税

一方で、法人税法上では「所得」はただ1つだけです。賃料等の不動産収入も、譲渡所得も全て「法人の所得」として合算されることとなります。

このことは、累進課税の所得税・法人税を考える上で1つのポイントとなってきます。

もし売却損が発生した場合、個人保有していた場合はその他の収入とは切り離されて考えられる一方で、法人保有の場合は不動産収入と合算されることとなります。

つまり、不動産収入を売却損で相殺(節税)できることを意味しています。

もちろん先に申し上げた通り、譲渡所得が分離されているからこそ所得税額が増減しないという、個人のメリットもございますので一概にどちらが良いとは言えませんが、法人の所得を考える際「法人の所得は1つ」ということはポイントになります。

【法人】法人税の税率

さて、それでは具体的な法人税率について見ていきます。

個人の所得税率は、住民税と合算すると最高55%にも及ぶのに対して、法人税率は最大でも33.59%となっています。 

更に前回述べたように、法人の方が個人よりも費用計上できる範囲が広かったり、費用計上できる生命保険の額が大きかったり、所得をコントロールしやすいです。

このように、税率の比較という面だけでも法人に軍配が上がります。

まとめ

今回は、税率の比較という観点から不動産の個人保有と法人保有についての違いを見てみました。

実際には税額の違いだけではなく、「法人の所得が1つ」であるゆえに、タイミングを考えたり、所得分散できる点に大きな節税のポイントがあります。

また、ここまで基本的には「法人有利」という話を進めてまいりましたが、個人での保有だからこそ適用される節税メソッドもございます。

ですので、次回は単純な税率比較から一歩踏み込んだ、保有中の税金比較をしてみたいと思います。

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