2021年11月/現場で感じる収益不動産市況(融資関係多め)

収益不動産を売買する人

本記事は公開1~2ヶ月前に配信した不動産投資メルマガの抜粋です。

11月は月末に決済が重なり、30日だけで仕入・販売・仲介の決済が4件ございました。

金融機関はA銀行・B銀行・C銀行・D銀行であり、不動産に積極的な銀行を象徴しているように感じます。

目次

融資は厳しくなったが金利は下がっている

現在の融資環境は、シェアハウス問題が表面化した2018年以前よりは厳しい状況ですが、融資状況が変化したのは自己資金額や審査基準であり、金利は低下傾向が続いています。

確かに自己資金(レバレッジ)は不動産におけるポイントの一つではありますので、IRR(内部収益率)などの指標の観点からは以前よりも劣る部分がありますが、純資産増加額を考慮した場合、低金利で資金調達できることのメリットも大きいと考えます。

理屈上は金利が下がれば、イールドギャップとのバランスから価格も上昇しますが、融資を受けられる方が少なくなっているので(物理的な需要が減っているので)、需要と供給のバランスから、一部の富裕層のみ金利低下の恩恵を受けられる状況が続いております。

不動産投資の融資でよく使われる4地銀の動向

コンコルディア・フィナンシャルグループ(横浜銀行、東日本銀行)と千葉銀行、武蔵野銀行の決算資料を見ますと、各行の貸出金利は低下・融資額は増加していることがわかります。

特徴としましては、かつて不動産融資に積極的な時期もあった東日本銀行ですが、アパートローンに関してはやや縮小傾向にあり、その分、同じグループの横浜銀行が伸ばしています。 

横浜銀行

・アパートローン期末残高 

  前年同期比2.3%増加

・貸出金利回(金利)    

  前年同期比0.03%減少⇒0.95%

東日本銀行

・アパートローン期末残高

  前年同期比7.8%減少

・貸出金利回(金利)    

  前年同期比0.01%減少⇒1.26%

千葉銀行

・中小企業貸出金期末残高

  前年同期比5.6%増加

・貸出金利回(金利)     

  前年同期比0.03%減少⇒0.89%

武蔵野銀行

・中小企業貸出金期末残高 

  前年同期比4.9%増加

・貸出金利回(金利)     

  前年同期比0.01%減少⇒0.87%

(参考)

コンコルディア・フィナンシャルグループ 2022年3月期 第2四半期(中間期)決算について

https://ssl4.eir-parts.net/doc/7186/ir_material_for_fiscal_ym/108575/00.pdf

千葉銀行 2022年3月期 第2四半期(中間期)決算の概要

https://www.chibabank.co.jp/company/ir/library/tanshin/pdf/2021_02_002.pdf

武蔵野銀行 2022年3月期 第2四半期(中間期)決算短信

http://www.musashinobank.co.jp/irinfo/financial/kessan/pdf/2021_03.pdf

スルガ銀行の近況

最近は富裕層への融資にシフトしているスルガ銀行について、11月26日の決算発表で気になった点を共有します。

一棟収益ローンの残高1兆329億円(9月末時点)のうち、6037億円を自己査定によって要注意先への融資と区分しました。(正常先は約2520億円)

つまり1棟収益物件への融資のうち、約60%の債権を要注意先に区分していることになります。

上記に伴い予防引当金340億円を積み増しますが、かなり堅めの引当金ではないかと感じました。多くの融資先で延滞は発生していないものの「確定申告書が受領できていない融資先」や「融資対象物件の収支がマイナスの場合」などを要注意先に区分しているとのことです。

逆に言えば、確定申告や物件の収支状況などを定期的に報告をしていれば、それだけで格付けが高まる可能性があると言えます。

もちろん、潤沢な金融資産やご本業の年収などは大きな要素ですが、紹介でもない限りは、金融機関との信頼関係はゼロからのスタートですので、どうしても新規融資の目線は厳しくなります。

資産背景を急に変えるのは難しいため、現時点での融資が厳しい方が今できる準備として、既存の借入先への報連相や定期的なコミュニケーションはとても有効だと考えます。

【出典:スルガ銀行 2022年3月期 中間決算説明会資料より抜粋】
https://www.surugabank.co.jp/surugabank/investors/irinfo/2021/pdf/211126.pdf

不動産投資は活況。特に海外投資家は・・・

冒頭に決済が1日4件あったと書きましたが、当社だけが順調なわけではなく、同業他社も売上・利益ともに好調と聞いています。

オープンハウスはグループ売上1兆円を目指す中期計画を立てましたが、有言実行で昨対比の売上40%アップの売上8000億円を超えました。

(参考)オープンハウス 決算説明資料 2021年9月期

https://openhouse-group.co.jp/ir/upload_file/m005-m005_07/20211112_1.pdf

もちろん、プレサンスコーポレーションとの資本業務提携による売上UPが大きいですが、収益不動産事業も売上1200億円で約10%アップ、営業利益で約20%弱のアップとなっております。

やはり、成約件数が多いことによる情報量は貴重だと思い、オープンハウスの担当者にヒアリングしたところ、最近は不動産会社・一般法人・海外投資家などの買主が増えているとのことでした。

特に海外投資家の観点では、本日時点のドル円の為替は約113円で少し円高調整があったものの、昨年12月の103円と比べると約1割の円安となっております

ドル資産を保有している方(世界標準)からすれば、日本の資産や不動産は1年前に比べてドル換算で10%安く買えることができ、利回りが1%近く上昇しているという見方もあります。

11月のレインズ成約事例

続いて11月のレインズ成約事例についてご紹介させて頂きます。

1都3県の成約件数は昨年対比で約60%(成約数減少)で、合計成約数は先月の36件と比べましても減少しています。

  • 2021年10月成約数:36件
  • 2021年11月成約数:24件

レインズ在庫は1071件(平成元年築以降、1億~5億、都内、重複有)先月の1100件から増加しており、3ヶ月連続の減少です。

レインズより当社集計

11月の成約を分析

11月は指値の結果、高利回りとなった物件や告知事項ありの物件、都内の駅近で4%台の成約などがありました。見て感じたのは、立地や築年数以外の要素では管理状態や修繕履歴がポイントだということです。

 賃貸経営において変えられることと変えられないことがありますが、変えられることにフォーカスして付加価値を高められるのも賃貸経営の醍醐味ではないでしょうか。

2021年11月 レインズ成約事例(抜粋)

①「大和田」駅 徒歩15分 昭和63年 RC造

売出価格1.70億⇒成約価格1.48億

土地251坪 建物286坪

成約利回り⇒約9.28%

ポイント:全戸ファミリー、利回り9%超、南西角地

留意点:駅徒歩15分

 

②「西川口」駅 徒歩9分 平成7年 S造

売出価格1.10億⇒成約価格0.95億円 

土地34坪 建物113坪

成約利回り⇒約8.93%

ポイント:利回り9%弱、近隣商業地域

留意点:残存8年S造、告知事項有、1階店舗

   

③「柴又」駅 徒歩2分 平成4年 S造

売出価格1.17億⇒成約価格1.08億

土地60坪 建物127坪

成約利回り⇒約7.64%

ポイント:駅徒歩2分、2駅2路線使用可能

留意点:残存5年S造、告知事項あり

 

④「浦和」駅 徒歩13分 平成2年 RC造

売出価格2.20億⇒成約価格2.20億 ※満額

土地64坪 建物200坪

成約利回り⇒約5.96%

ポイント:大規模修繕実施済み、全室ファミリー、商業地域

留意点:利回り5%台、EV有り

 

⑤「亀戸」駅 徒歩5分 平成21年 RC造

売出価格3.298億⇒成約価格3.298億 ※満額

土地26坪 建物160坪

成約利回り⇒約5.5%

ポイント:残存35年RC、容積率700%、公道角地

留意点:土地面積30坪以下、EV有り、店舗×2

 

⑥「十条」駅 徒歩5分 平成30年 S造

売出価格3.10億⇒成約価格3.10億 ※満額

土地30坪 建物170坪

成約利回り⇒約5.04%

ポイント:2駅2路線使用可、築3年S造、前面道路 幅員約24m

留意点:利回り5%前半、土地面積30坪以下

⑦「雑司ヶ谷」駅 徒歩3分 平成19年 RC造

売出価格5.10億⇒成約価格4.80億

土地104坪 建物97坪

成約利回り⇒約4.5%

ポイント:駅徒歩3分、300㎡超、大規模修繕実施済み

留意点:利回り4%半ば

  

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