【民法改正と不動産経営②】契約不適合責任とは何か

    今回は、民法改正の中でも大きなインパクトを与える「契約不適合責任」「契約の解除」などについて見ていきます。

    目次

    瑕疵担保責任とは

    不動産売買をするうえで、誰もが何度も「瑕疵担保責任」という言葉を目にしているかと思います。

    住宅金融普及協会の言葉を借りて説明しますと、

    瑕疵担保責任

    「売買契約の目的物(購入したもの=戸建住宅やマンションなど)に、購入した時点では明らかになっていない”隠れた瑕疵”があった場合、売り主が買い主に対して負う契約解除や損害賠償などの責任」のことです。

     例えば、契約締結時には買主・売主共に知らず(当然、重要事項説明書の中に何の記載もないにも関わらず)、物件購入後になって敷地内に廃棄物の埋没が確認できたり、雨漏りやシロアリの発生が見つかったりした場合、買主は売主に対して責任を追及することができます。

    この「責任の追及」とは、損害賠償の請求か契約の解除を指します。

    この瑕疵担保責任が及ぶ範囲は、原始的瑕疵(契約の締結までに生じた瑕疵)に限られており、更にその瑕疵は「隠れた」瑕疵、民法の言葉を使うなら「善意」「無過失」である必要がありました。

    例えば、壁紙の亀裂など契約当事者が見て分かる/分かりえた不具合は対象となりませんでした。

    • シロアリ
    • 雨漏り
    • 壁紙の亀裂

    そんな瑕疵担保責任が、今回の民法改正によって大きく姿を変えることとなります。

    「瑕疵担保責任」は撤廃

    結論から申し上げますと、瑕疵担保責任という概念は撤廃され、「契約不適合責任」という新たな概念が生まれました。

    ※そもそもどうして「瑕疵担保責任」という概念が生まれた?

    例えば電気屋で「このテレビを1つください」といった場合、実際に購入するのが自分の目の前にあるテレビではなく、倉庫の奥に眠っている同じ型番のテレビでしょう。

    このように、数量と種類を指定して取引が行われるようなものを「不特定物」と呼びます。

    では、不動産はどうでしょう。「100坪の土地を1つください」と言っても、場所や地域特性、地型など多くの要素が含まれているため、「100坪なら何でも良い」とはならないはずです。

    このような場合を「特定物」と呼びます。

     この「特定物」はケースバイケースで個々の状況が異なるという特徴があり、この点が曲者です。

    例えばこの土地は八重洲にあるから価格が高い、地型が悪いからお買い得だ、のような具合です。

    極論を言えば、特定物売買は不特定物のような「完成系」がないため、「買主はその特定物に納得して買っているのだから、売主は物件を引き渡したらそれ以上の義務はない」とも言えてしまうのです。

     ただ、この言い分にはちょっと納得できません。

    仮に完璧な形がなかったとは言え、例えばシロアリの被害のように、気づかないところで建物構造上に重大な影響を及ぼす欠陥があっても売主が何の責任も取らないなら、買主は安心して購入することができなくなります。

     と、このような経緯で、特定物の売買において特別に設けられたのが「瑕疵担保責任」となります。

     しかしこの瑕疵担保責任は、実務にそぐわない点も多く、120年の時を経て改正されることとなりました。

    新たに「契約不適合責任」が誕生

     契約不適合責任とは読んで字の如く、売買契約において不備があった場合、売主が買主に追わなくてはいけない責任のことを指します。

     まず最初に、改正民法の条文該当箇所を見てみましょう。

    「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足物の引渡しによる履行の追完を請求することができる」(改正民法562条 買主の追完請求権)

    この条文に明記される中でも、「追完を請求」など従来の瑕疵担保責任の文脈では登場しなかった事柄が確認できます。

    また、「特定物」に制限されていた瑕疵担保責任ですが、「引き渡された目的物」というように対象が広くなっていることが分かります。

    瑕疵担保責任 vs 契約不適合責任

    ここからは、瑕疵担保責任と契約不適合責任との比較から、新制度について見ていきます。

    責任を負う範囲

     瑕疵担保責任では、売主が責任を持つのは特定物における隠れた瑕疵、かつ原始的瑕疵(契約締結までの瑕疵)に限られていました。

    しかし、契約不適合責任はその名の通り、物件引渡しの時点で契約の内容に適合しない用件まで責任を負うこととなっています。

    そのため(少々強引な例ですが)、先に述べた「壁紙の亀裂」は、瑕疵担保責任の範囲からは外れることとなりますが、もし「壁紙に不具合はない」という契約になっていた場合は買主が知っていた/知り得たかに関わらず売主の責任が問われることとなります。

    責任追及の方法

    瑕疵担保責任では、買主が請求できる権利としては「損害賠償」と「契約の解除」の2つでした。

    しかし、契約不適合責任においては上記の2つに「追完請求」と「代金減額請求」の2点が追加されています。

    この背景には、責任の範囲が「特定物」に限定されなくなったことも影響しています。

    特定物は「完璧な姿」が定義できないため、それを追及したり、完璧な姿の金額をベースに減額請求したりできないという定めになっていました。

    しかし、その区別が撤廃されたため、買主は行使できる権利の幅が増えたことになります。

    損害賠償の範囲

    更に、従来から買主の権利であった損害賠償と契約の解除にも大きな変更があります。

    1つめの変更は、損害賠償の範囲が「信頼利益」から「履行利益」に変更されたことです。

    信頼利益とは、「契約が有効だと思っていたために失った利益」、履行利益とは「契約によって得た債権によって、債権者が得られたであろう利益」を指します。

    不動産売買においてこの変化の影響を受ける代表的な例を挙げるなら、「転売益」です。

    従来転売益は責任の範囲に含まれておりませんでしたが、今後は転売益も損害賠償の対象に含まれることとなります。

    契約解除の条件

    2つめの変更としては、契約解除の条件が挙げられます。

    「契約の解除」は、その契約によって利益を確保しようとしていた売主にとっては避けるべき問題です。そのため、従来の瑕疵担保責任は「契約の目的が達成できない場合」に限って契約の解除が可能とされていました。

    しかし、今回の改正では、債務不履行が軽微な場合を除いて解除ができるようになりました。

    つまり「目的の達成はできるが軽微ではない不備」についても契約の解除が可能となりました。

    更に前回の危険負担の記事でも述べたように、売主側の帰責事由も不要となっております。

    権利行使の期限

    最後に、権利行使のできる期限についても大きな変更が加えられました。

    瑕疵担保責任における追及の要件ですが、判例(最高裁平成4年10月20日判決・民集46巻7号1129頁)では

    具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある

    とあります。

    「損害額を計算してその根拠を示して、」と、かなり面倒な作業が求められていました。

    しかし、契約不適合責任では種類又は品質に関する不適合については「1年以内に通知」で足りるとし、数量や移転した権利に関する不適合については原則無期限に行使できるとされました。

    結局何が重要か

    ここまで長々と改正民法の変更点について述べてきましたが、最重要ポイントとしては「売買契約・引渡し時点での物件の状態を把握し、売主買主で合意すること」となります。

    ・従来の物件状況確認書や重要事項説明、付帯設備表において、正しい情報が記載されており、相互の了承が取れているかの確認

    ・買い手が物件を契約する目的や、その物件を用いてどうするか(転売?保有?)といった点まで、契約の条項の中に織り込む

    が求められるでしょう。

    ルールが根本から変わるためにまだ曖昧な点も多く、実務や判例の積み重ねによって形作られることになるとは存じます。しかし、契約の当事者としてどのようなリスクがあるのか、改正直後は特に注意する必要があります。

    今回はここまでとなります。

    長文となりましたが、お読みいただきありがとうございました。

    次回は改正点の中で、賃貸借契約に関する事項についてご説明いたします。

    目次
    閉じる