2019年1月の不動産市況
昨年、一部の金融機関での不正融資問題の影響で【郊外・バス便・築古】の物件に関しては融資で苦戦し、結果として値下がりしつつあるという状況です。
昨年までは耐用年数以上での融資を行う姿勢が一般的でありその反動が起きているように感じます。
一方、【都心・駅近・築浅】の物件に関しては以前と変わらず長期融資ができ、なおかつ今後の賃貸需要が見込めるという金融機関の判断は変わらず、5%前後での成約も多く聞いております。
上記の結果、物件の立地、構造、築年数によって格差が広がっているという状況であると言えます。
しかしながら融資が付かないからと言って収益性が低い、価値が無いとは限りません。どうしてもその仕組み上、金融機関の担保価値、評価は画一的にならざるを得ませんが、個別で見た場合に価値判断のギャップが生まれる物件も増えてくると予想されます。
したがって、自己資金や担保余力がある方には好機です。
- 入居率も安定し収益性が高いが融資は苦戦する【見切り案件】を狙って、長期保有か融資環境が好転した際に売却
- 都心、築浅、駅近で希少立地物件もしくは家賃アップが見込める物件を狙って、投資基準を明確にしてスピード買付
また、これから3月の決算期に入っていくにあたり不動産会社が売主の見切り案件が益々増加していくでしょう。
自己資金を抑えた投資は当分難しい状況が続くかと思われますので(既存融資先は例外)、割り切って一度休むか、「これは!」という物件に対しては自己資金を入れてでも買いに入るのが良いでしょう。

今後の金利・融資・株式動向
下記グラフを見て頂くと分かりますが直近10年の金利は低下し続けております。

しかしながら、直近6カ月だけを考えますと一部の金融機関においてやや上昇している印象です。
もちろん、地主で土地をお持ちの方や純資産が潤沢にある方においては金融機関の積極融資姿勢は変わっていません。しかし、そのハードルは確実に高くなっています。
その為、東京オリンピックまでは国の方針として低金利を維持するものの、全体としては横ばいもしくは緩やかな上昇となっていくでしょう。
次に融資動向ですが、国内銀⾏の不動産業向け貸出の残⾼は、2018年6 ⽉末時点で約77 兆円に達し、かつてのバブル期を上回る過去最⾼の⽔準にあります。(下記右図参照)
一方、新規融資実行額(フロー)は前年を下回っているのがわかります。(下記左図参照)
バブル期は短期融資中心でしたが、現在は長期融資が組めるようになった影響もあり残高が減らずストックが積み上がっていく図式になっていると考えられます。

また、金融機関別の不動産業向け貸出の内訳(下記参照)をご覧頂きますと個人による貸家業(青い棒グラフ)は一時期より減少傾向にあり、地域銀行の下落と比べると信用金庫の存在感が増していることが伺えますし、現場の感覚としてもそのように感じます。

最後に株式動向について参考情報としてコメントさせて頂きます。
2013年を起点とした日経平均の上昇時においてPBR(株価純資産倍率)は1~1.5前後で推移しており株価の上昇は純資産の増加に支えられていると言えます。
さらに、2013年からの不動産価格の上昇を考慮しますと時価と簿価の乖離である含み益が増加した会社もあり含み益を考慮した修正PBRが1を割る企業などは底堅いと言えるでしょう。
一方、中国経済の減速や貿易摩擦の影響による収益悪化懸念もある為、イベント時に乱高下しながら全体として横ばいになるのではと推測します。

消費税増税と増税対策
今年、消費税10%へと増税が予定されている中で様々な対策が用意されております。
住宅ローン減税の期限が現行の10年から13年に延長されたり、ポイント還元やプレミアム商品券などありますが、あまり注目されていない制度にインボイス制度というものがあります。(適格請求書等保存方式)
しかしながら、インボイスは課税業者しか発行できない為、免税事業者からの仕入れても仕入税額控除ができず、取引から除外されたり経理事務が煩雑になってしまう可能性があります。
今後、特に不動産取引にかかわる部分に関しては詳細情報を把握していきたいと思います。
