2022年2月/現場で感じる収益不動産市況

失敗しない収益マンション

本記事は公開1~2ヶ月前に配信した不動産投資メルマガの抜粋です。

ロシア-ウクライナの件もあり、経済動向・金融市場に大きな変化が起きています。

目次

在庫不足の傾向は変わらず

アメリカを中心とした世界的な利上げムードによって成長株などは調整が入りましたが、日本の不動産は需要に対する供給不足と融資環境の支えがあって底堅い市況が続いています。

直近ではウクライナ危機インフレ高進により、先の読めない状況が続きそうですが、私自身インフレを経験したことがないため、リアリティや想像力が足りていないのではないかという漠然とした不安を感じるのも事実です。

生活必需品につきましても、企業努力の限界は超え、次々と値上げが予定されているため、徐々にインフレの足音を感じる方も多いのではないでしょうか。

過剰債務と供給制限がある今の経済は1940年代の戦後に近いという声も多く、インフレを抑え込むために安易に利上げをすると返済負担が増えてしまうため、FRBをはじめとした中央銀行や政府は非常に難しい舵取りが求められています。

【出典:2022年2月15日 日経新聞】
【出典:2022年2月10日 日経新聞】

ハイパーインフレの定義

ここで本題とは逸れてしまいますが、インフレについて少し触れたいと思います。

アメリカの経済学者フィリップ・D・ケーガンは、ハイパーインフレーションは「インフレーション率が毎月50%を超えること」と定義しており、仮に毎月のインフレ率50%が継続すると、一年後には物価が129.75倍に上昇することを意味します。

一方で、国際会計基準の定めでは「3年間で累積100%以上の物価上昇」をハイパーインフレの定義としているようです。

もちろん、急激に物価が上昇することは先進諸国では稀ですが、実際にトルコ統計局は2月3日、1月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比48.69%上昇したと発表し、前月の36%からさらに加速し、2002年4月以来の高水準となりました。

また、過去の歴史を振り返っても決してあり得ない出来事ではないことがわかります。

現在、円の実質実効レートは50年ぶりの低水準で、2015年6月に黒田総裁が国会で発言したいわゆる【黒田ライン】を割り込んできました。

【出典:2022年2月26日 日経新聞】

戦後の日本でも1946年2月、金融緊急措置令および日本銀行券預入令を公布し、5円以上の日本銀行券を預金、あるいは貯金、金銭信託として強制的に金融機関に預入させ、「既存の預金とともに封鎖のうえ、生活費や事業費などに限って新銀行券による払出しを認める」という非常措置を実施した歴史があります。

参考:日本銀行HP 新円切り替え

https://bit.ly/3HvMVav

不動産マーケットへの影響

ここでインフレ事例について触れさせて頂いたのは、最近の不動産市況は将来のインフレや構造変化を織り込み始めている可能性があるからです。

世界的にもお金の供給量は増え続けているため、今より過去を振り返れば、ほとんどの時点で、「昔は安かった」と感じることになりますが、株式をはじめとした金融商品・通貨などは、相対的な価格として市場で決められます。

もちろん、相対取引、個別要因があるからこそ不動産は面白いのですが、昨今の情報化社会では極端に情報格差があることは珍しく、需要に対して供給が追い付いていないという状況が続き価格が安定しています。

その他、インフレ観測でお金⇒実物資産への資産入替ニーズが高まるとともに、本業を補完したい一般法人などの新規参入も増えてきたという実感があります。

一般法人の特徴については前回のメルマガでもコメントしましたが、借入に依存するのではなく、手元資金を使ってあえてレバレッジ比率を抑える方が多い傾向にあります。

金利は上昇傾向なのか?

どこまでレバレッジを効かせるかは、金利上昇リスクとの兼ね合いですが、金利を上げにくい一つの理由については、長らく低金利が続いたことで国債や社債発行額も急増したため、世界的にも金利上昇による潜在的なリスクが高まっているという事情があります。

金融情報会社リフィニティブによると世界の社債発行額は2020年に前年比2割増の5.4兆ドル、21年に5.2兆ドルと、それぞれ過去最高と2番目に高い水準でした。

特に財務体質が脆弱な企業が発行し、投機的とされる低格付け債の発行額は20年に前年比3割増の5727億ドル、21年に6706億ドルと2年連続で過去最高を更新しています。

この結果、今後5年間(22~26年)に返済期限を迎える債務は過去最高の160兆円まで積み上がり、米格付け会社ムーディーズによると返済期限のピークは25年の4590億ドルで、22年の520億ドルから9倍に増える見込みです。

返済と金利上昇が同時に進めば借り換えに伴う負担が急増し、企業財務の重荷となる懸念があります。

【出典:2022年2月17日 日経新聞】
【出典:2022年2月6日 日経新聞】

もちろん先の見えない今だからこそ、これから起こることをシミュレーションし、戦略を再構築することで危機をチャンスに変えていける醍醐味もあります。

インフレ&金利上昇と不動産

まず最初に、インフレと金利上昇という2つの要因が不動産に与える影響を考えてみたいと思います。

マイナス面については、建築資材の高騰と金利上昇は支出の増加に繋がり、ネット利回りやキャッシュフローを圧迫することで収益還元価格の下落要因になり得ます。(DCF法で用いる割引率が高まります)

一方、プラス面については、物価上昇は「建物」と「土地」という実物資産の価格上昇に繋がり、相対的にお金の価値が下がることで、借入金の元本価値が下がります。

金利負担とのバランスですが、デフレ化では合理的だった現金保有のメリットが無くなり、お金から不動産などの実物資産に資産を入れ替える動きが加速していく可能性があります。

そのため、実物資産という観点からはインフレ耐性がありますが、金融商品という側面からはマイナス要因となるため、収益不動産においてはより一層、家賃収入がポイントになると考えます。

家賃は価格粘着性がありますし、日本では借地借家法の影響で固定化されやすいですが、今後は物価に連動して家賃は上げられるのか、空室率・滞納率を最小にできるのかが経営の要諦になるでしょう。

家賃滞納率は減少傾向

直近の賃貸動向について、ご参考までに日管協短観から抜粋してご紹介させて頂きます。

【出典:第25回 賃貸住宅市場景況感調査 『日管協短観』 2020年10月~2021年3月】
https://www.jpm.jp/marketdata/pdf/tankan25.pdf

上記の表より、首都圏の家賃滞納率は約4%と低位で推移していますが、リーマンショック後は約8%で推移していた時期もあります。

景気変動による部分もありますが、主な背景は家賃保証会社への加入によって滞納率が減少したと推測します。

現在の管理形態の主流は連帯保証人ではなく、保証会社との契約を条件にすることですが、保証会社があるからと言って必ずしも安心というわけではありません。

将来的に保証会社の保証料が上がることもあり得ますし、保証会社の審査が厳しくなれば賃貸経営にも影響が出てきます。

当社もその点を踏まえ、入居者様の審査は慎重に行っていきたいと思います。

一方、入居者様の立場としては、賃金が上がらないのに家賃だけ上がるのは生活が苦しくなりますし、水光熱費などのインフラ費用も上がっていくことでむしろ家賃の値下げ圧力になります。

特に、家賃の絶対額が低い物件は、収入に占めるインフラ支出割合が相対的に高いので、生活保護などの方以外は価格競争力で劣ってしまう懸念はあります。

上記などを考慮し、インフレが不動産に与える影響は一長一短だと言えますが、今後はインフレ耐性が高い不動産は何か?という視点も大切になると考えています。

2月のレインズ成約事例

続いて1月のレインズ成約事例についてご紹介させて頂きます。

1都3県の成約件数は昨年対比で約47%で、合計成約数は先月の16件と比べて横ばいとなっています。

  • 2022年1月成約数:16件
  • 2022年2月成約数:15件

レインズ在庫は1127件(平成元年築以降、1億~5億、都内、重複有)先月の1031件から増加しており、半年ぶりに大幅に増加に転じました。(在庫水準については昨年の8月とほぼ同じです)

レインズより当社集計

1億円以下の物件が多い

 2月は小ぶりな物件の成約事例が多かった印象です。

それぞれ収益性と資産性の観点から一長一短がありますが、表面利回りと物件価格にも一定の相関関係があります。

1000万円以下の築古戸建てなどで利回り20%以上という物件もありますが、仮に利回り20%でも家賃収入は200万円ですので、固定費やオーナーの人件費、間接経費などを考慮した場合、実際の収支が思った以上に低くなってしまうことがあります。

もちろん、規模があまりにも大きい場合は流動性の観点からリスクはありますが、収益性を見極めるためにはNOI率や人件費や間接経費などを考慮した収益の絶対額を精査する必要があります。

2022年2月 レインズ成約事例(抜粋)

「大宮」駅 バス16分+徒歩4分 H4年 RC造

売出価格 8,280万円⇒成約価格 8,280万円 ※満額

土地165坪 建物156坪

成約利回り⇒約9.21%

ポイント:利回り9%以上、高積算(売価比約97%)

留意点:バス便、字型△、浄化槽有

 

②「京王稲田堤」駅 徒歩6分 S63年 RC造

売出価格 8,980万円 ⇒ 成約価格 8,300万円

土地52坪 建物79坪

成約利回り⇒約8.66%

ポイント:プロパンガス、2路線利用可能

留意点:ハザードリスク有、賃料3万円台

「本厚木」駅 徒歩8分 H9年 S造

売出価格 5,600万円 ⇒ 成約価格 5,600万円 ※満額

土地60坪 建物75坪

成約利回り⇒約8.59%

ポイント:単身ながらバストイレ別、27㎡~、大東建託施工

留意点:ハザードリスク有

「洗足池」駅 徒歩16分 H4年 RC造

売出価格 8,480万円 ⇒ 成約価格 8,350万円

土地48坪 建物85坪

成約利回り⇒約8.36%

ポイント:全戸LDK間取り、タイル貼RCマンション

留意点:駅徒歩16分、※借地権有

⑤「府中」駅 バス10分+徒歩2分 H16年 RC造

売出価格 9,980万円 ⇒ 成約価格 9,850万円

土地21坪 建物72坪

成約利回り⇒約7.11%

ポイント:バストイレ別、オートロック有

留意点:バス便、字型△

⑥「中板橋」駅 徒歩6分 S62年 S造

売出価格 7,180万円 ⇒ 成約価格6,700万円

成約利回り⇒約6.33%

ポイント:2駅利用可能、タイル貼マンション

留意点:耐用年数オーバー、私道負担あり

⑦「鷺ノ宮」駅 徒歩9分 H6年 S造

売出価格 1.6億円 ⇒ 成約価格 1.55億円

土地94坪 建物108坪

成約利回り⇒約6.11%

ポイント:直近で修繕工事実施済み、土地300㎡以上

留意点:残存6年S造、字型△

⑧「西浦和」駅 徒歩6分 H19年 S造

売出価格 7,800万円 ⇒ 成約価格 7,650万円

土地30坪 建物43坪

成約利回り⇒約6.00%

ポイント:積水ハウス施工、H19年築、バストイレ別

留意点:店舗あり、土地100㎡程度

⑨「石神井公園」駅 徒歩12分 H22年 RC造

売出価格 1.578億円 ⇒ 成約価格 1.576億円

土地73坪 建物81坪

成約利回り⇒約4.87%

ポイント:残存35年RC、タイル張りマンション

留意点:私道接続、利回り5%以下

  

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