内水氾濫のリスクを抑えるためには

    前回の「水害ハザードマップ」に関連して、今回は「内水氾濫」について見ていきます。

    目次

    内水氾濫とは

    内水氾濫とは、雨が下水道などの排水能力を超えて降ったために、下水道や排水路から水が溢れ出す現象のことです。

    対して、河川の水が堤防を越えて溢れ出す現象のことを「外水氾濫」と呼びます。

    内水氾濫外水氾濫
    原因排水能力を超えた降雨堤防の決壊、氾濫
    被害範囲局所的狭い
    被害規模小さい大きい
    場所の予測困難ある程度できる
    主な被害建物の浸水など建物の倒壊など

    一般的には上記の表のように、内水氾濫の方が被害は小さいとされています。

    「武蔵小杉」のように都内の内水被害は大きい

    しかし、直近のゲリラ豪雨や台風被害の増加によって、特に都市部での内水被害は大きくなっています。「武蔵小杉」のタワマンの内水氾濫は記憶に新しいのではないでしょうか。

    それを証明するのが、過去10年間の水害被害額です。2008年~2017年の10年間に被った水害の被害額合計1.8兆円のうち、外水氾濫による被害は約1,1兆円(59%)、内水氾濫による被害は約0.7兆円(41%)と、内水氾濫の被害額は4割強を占めています。

    特に東京都内では(大洪水の起こるような河川や津波が起こりにくいことを除いても)、内水による被害が約429億円(71%)と7割以上を占めているのです。

    近年の降雨および内水被害の状況、下水道整備の現状について

     気候変動を踏まえた都市浸水対策に関する検討会 第1回(令和元年12月18日)

    https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001320996.pdf

    なぜ東京では内水氾濫が多いのか

    東京など都市部で内水氾濫の被害が多いのは、地面がアスファルトやコンクリートに覆われており、かつて土に浸透していた水がその行き場をなくしていることに大きな原因があります。

    そのため、内水氾濫は「都市型水害」という名で呼ばれることもあります。

    東海豪雨を振り返る

    内水反氾濫の脅威が注目されるきっかけになったのは、ちょうど20年前に名古屋市を襲った「東海豪雨」による氾濫です。

    東海豪雨では、名古屋市内を流れる新川の堤防が決壊したことに加え、排水しきれなかった雨水が地上に溢れ、最終的に浸水面積は市内全域の38%にも及んだといいます。

    川から離れたエリアも浸水した

    下の地図は、先月の日経新聞に掲載されていた東海豪雨で浸水した箇所を表す地図です。

    「内水氾濫」頻発 迫る都市水害の脅威、東海豪雨20年、日本経済新聞、2020/9/11

    川沿いに浸水が広がっていることも見て取れますが、川からは遠く離れた場所でも局地的に浸水が起こっていたことが分かります。

    多くの場所は川の水が溢れ出たのではなく、トイレなどの排水管から水が噴き出し、結果的に住宅街が泥水に覆われる事態となったのです。

    この洪水によってもたらされた工場の停止や交通機関のストップなど、経済活動へも大ダメージを与えました。その被害総額は7,715億円にのぼるとのことです。

    対策は進むも追いつかず!?

    この豪雨以降、排水機能を高めるポンプや、雨水をためる地下空間の整備などが各自治体によって進められていますが、地球温暖化やヒートアイランドなどにより、想定を超すような大雨、台風の被害リスクは高まっています。

    「防災対策を自然の力が上回る事態が起こっている」とも言えるでしょう。実際、2018年の西日本豪雨や昨年の台風19号は、過去最大規模の雨量となり、甚大な被害をもたらしています。

    物件単体では内水氾濫対策は難しい

    内水氾濫への対策は、もはやハード面のみでは対応が難しくなってきています。

    国交省は新たな水害対策として、ダムや堤防で氾濫を防ぐだけでなく、遊水池や水田に計画的にあふれさせることで被害を小さくする「流域治水」を提唱したり、危険な地域にある建物の移転や開発の規制なども検討しているとのことです。

    また、水害対策に取り組むビルの容積率を緩和することも検討されています。もともと緑地や公共駐車場を設ける場合に、容積率の上乗せは行われていましたが、それが水害対策にも反映されることとなります。

    具体的には、「新築や建て替えの際に、雨水を一時的に貯留する設備や緊急物資の備蓄スペース、避難場所などを設ける」「避難場所となる高台や避難タワー、大人数を収容できる避難施設を建設する」「森林保全に取り組む」といった場合です。

    いずれにせよ、単に1つの施設や1の物件、1つの堤防で水害を防ごうとするのではなく、自治体や企業が連携した対策が求められているといえるでしょう。

    物件の売買の際、その物件がハザードマップ上のどこに位置するかは当然重要ですが、単なる地理的要因以外に、自治体を中心としたコミュニティとしてどのような対策が行われているのかという点も確認すべきかもしれません。

    <参考>
    「ビルで雨水貯留を 容積率、水害対策に応じ優遇」、日経新聞
    2020/8/24 2:00
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62960760T20C20A8MM8000/

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