サブリース契約は新法によって大きく変わった

マンション投資の動向

今回はいよいよ、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年6月公布)」、いわゆる「サブリース新法」について見ていきます。

その中でも今回は、昨年12月15日に一部先行して施行された。「サブリース業者とオーナーとの間の賃貸借契約の適正化に関する措置」を取り上げます。

目次

ざっくり言うと・・・

今回の規制はサブリース契約の営業や契約締結に関するものです。

「家賃が減額されたからサブリース契約を解約したい!」等の出口部分についての規制ではありませんのでご注意ください。

規制の対象は「サブリース業者」と「勧誘者」

早速ですが中身を見ていきます。まず、そもそも誰を対象にした規制なのでしょうか。

今回の施行で規制の対象となっているのは、サブリース契約のうち特にマスターリース契約(= オーナーが所有する物件を不動産業者が一括で借り上げること)を結ぶに際しての「特定転貸事業者」や「勧誘者」です。

  • 特定賃貸借契約(サブリース契約)に基づいて転貸事業を営むのが「特定転貸事業者」
  • その契約締結を勧誘するのが「勧誘者」

「契約締結を勧誘する」という表現が分かりにくいですが、基本的には管理条件付きでの物件売買を提案している不動産業者や建設会社が該当するケースが多いです。

ただ昨年10月に国土交通省が発表した「サブリース事業に係る適切な業務のためのガイドライン」によると、

・サブリース業者から勧誘の委託を受けたFP、コンサルタントなどの個人

・自己の物件についてマスターリース契約を結んでいるサブリース会社から紹介料等の金銭を受け取りマスターリース契約を結ぶことを勧めるオーナー(「お友達紹介キャンペーン」のようなイメージ)等

も「勧誘者」に含まれるとのことですので、所有物件でサブリース契約を結ばれているオーナー様も一度は規制の内容について目を通した方が良いかもしれません。

  <規制の内容 ~禁止事項~>  

「特定転貸事業者」や「勧誘者」は、サブリース契約の締結にあたって下記の2点が禁止されます。

① 誇大広告等の禁止(法第28条)

② 不当な勧誘等の禁止(法第29条)

どちらも当たり前のような内容ですが、直近のサブリース契約に関するトラブルは「契約開始後数年で意図しない保証賃料の減額があった」「いきなり巨額の修繕費用がかかることを聞かされた」「解除しようと思ったが解除できない」といった具合で、契約内容の説明や理解が不十分で発生するケースがほとんどです。

今回の施行により、集客を行うための「広告」段階から、オーナー側が誤った理解をしないように規制がかかることとなります。

ガイドラインでは上記の規定で禁止とされている「故意に事実を告げない行為」「故意に不実のことを告げる行為」等についての具体例が複数ページに渡って提示されていることに加え、使用する文字のポイント数や色、強調箇所の記載方法などまで言及があり、国交省としても「サブリース契約に対する誤った理解の防止」について、強い問題意識を持っていることが伺えます。

  <規制の内容 ~重要事項説明~>    

サブリース新法で新たに義務付けられた項目として、「マスターリース契約前の重要事項説明」があります。

売買契約の場合は契約の当日に行われることも多いですが、マスターリース前の重要事項説明は契約前1週間程度の時間をおいて説明することが望ましいと記載されています。

記載が必須の項目は14あり、羅列すると

① マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、
 名称又は氏名及び住所
② マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
③ 契約期間に関する事項
④ マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、
 支払方法等の条件並びにその変更に関する事項
⑤ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
⑥ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
⑦ マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
⑧ 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
⑨ 責任及び免責に関する事項
⑩ 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
⑪ 転借人に対する⑤の内容の周知に関する事項
⑫ マスターリース契約の更新及び解除に関する事項
⑬ マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の
 権利義務の承継に関する事項
⑭ 借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要

となります。

特に⑭についてはサブリース業者が「借地借家法における借主」の立場になるため、

・減額請求について
・更新拒絶等の要件について

の説明が必須となります。

また、維持保全の費用負担であったり、家賃の条件や変更であったり、ここまで述べてきたトラブルに関する項目も説明必須となっております。

まとめ

このように、広告や契約締結時における確認項目が追加されたことにより、業界としてのイメージ向上につながるのではと私は考えています。

ただ、説明をされたうえでも理解の難しい項目もあり、複数の法律が絡んでくる点ではありますので、安易に「家賃保証付きのサブリースだから安心」と考えるのではなく、サブリース契約の締結に際してはオーナー側がリスクを理解し、例えば家賃減額や大規模修繕が発生した際の予算も見ておくなど、より一層慎重な姿勢が求められていると言えそうです。

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