賃貸不動産経営管理士の成り立ちと役割

    前回までは「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」中でも特に令和2年12月15日から先行で施行された「サブリース」に関する項目を見てきました。

    今回からは同じ法律で定められた制度のうち、もうひとつの要である「賃貸不動産経営管理士」の扱いについて見ていきます。

    本項目は直接投資家様に関わる部分は少ないものの、国が賃貸管理業に対してどのような思惑を持っているのか、それがどのように変化してきたのか、という点を見て取れますので、ぜひお目通しいただけますと幸いです。

    目次

    普及しなかった「賃貸住宅管理業者登録制度」

    そもそも「賃貸不動産管理士」という資格についてご存じない方も多いのではないでしょうか。この資格が生まれる契機となった出来事が起こったのは平成23年のことであり、今年でちょうど10年を迎えます。

    その出来事とは、国道交通省によって「賃貸住宅管理業者登録制度」が施行されたことです。

    https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/tintai/

    ざっくり言うと、「賃貸不動産管理士」の前身になったのが「賃貸住宅管理業者登録制度」

    「賃貸住宅管理業者」とは

    ①家賃、敷金等の受領事務

    ②契約更新事務

    ③契約終了事務

    の上記3つの事務、通称「基幹事務」を少なくとも1つ含む管理事務を業として行うものが「賃貸住宅管理業」と呼ばれます。つまり一般に「PM」と呼ばれる事務を行っている管理業者が該当します。

    この制度は

     ①管理会社の登録手続きなどを定めた登録規定

     ②賃貸住宅管理業のルールなどを定めた業務処理準則

    という2つの告示から構成されており、対象となるのは、

     ①貸主から委託を受けた賃貸管理(管理受託)

     ②賃貸住宅を転貸し、貸主として賃貸管理(サブリース)

    を行っている業者です。

    10年前からサブリース業者を含めた管理業者に対するルールを定めた法律が制定されていたのです。

    この制度が設立された目的は「賃貸住宅管理業を営んでいる業者に対して登録制度を設けることで、管理委託しようとする人や入居者の判断材料にしてもらおう」というものでしたが、恐らくこのメルマガで初めてこの登録制度の存在を知った方も少なくないかと存じます

    というのもこの制度はあくまで「任意制度」であり、管理会社側からして見ても登録することで特段大きなメリットであったり、逆に罰則があるものではありませんでした。(もちろん有識者に対しての安心感には繋がりますが)  

    そのため、2015年末時点でも登録業者の管理戸数は民間借家の40%に留まっていました

    また、例えば宅建士の免許のように、登録に際しての有資格者の設置義務といった条件も特に定められていなかったため、何をもって「適正化」と判断するかについてあやふやな部分も残されておりました。

    そんな中制定から5年を迎える2016年に制度自体の見直しが行われることとなります。

    賃貸不動産経営管理士の登場

    2016年の法改正では新たに、賃貸人への重要事項説明は、「賃貸不動産経営管理士」など一定の資格者が行うべきというルールが追加されました。

    賃貸不動産経営管理士の義務としては

    ・重要事項の説明

    ・需要事項説明書への記名押印

    ・契約内容記載書への記名押印

    があり、さらに賃貸住宅管理業者登録制度に登録している業者の場合は、事務所ごとに賃貸不動産経営管理士(もしくは管理事務の実務経験6年以上)の設置が義務付けられました。

    これらの条件を見てみると、賃貸管理における「宅建士」と言ってもあながち間違いではないでしょう。

    ついに、任意→義務化へ

    ただ、この改定でも登録制度はあくまで「任意制度」に留まっていました。

    そのため、国交省が2019年に実施したアンケートの結果を見てみても、すでに賃貸住宅管理業者登録制度に登録していう業者は全体の52.2%に留まり、「登録しておらず今後も登録しない見込み」の業者も25%存在しています

    国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(管理業者)」と、このように厳格化はされつつあるものの制度が浸透しきっていない現状や、前回までに述べてきたようなサブリース契約を中心とした賃貸管理におけるトラブルが多発していることを受け、ついに賃貸住宅管理業者の登録が「義務化」されることになったのです。

    ここまで「賃貸住宅管理」における制度の変遷について見てきました。

    次回はいよいよ、今回の法改正の中身について見てみます。

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