所有者不明の土地と法整備


    こんにちは!中原です。

    前回までは賃貸不動産に関する直近の大きな法改正である、いわゆる「サブリース新法」についてその背景や改正点を確認してきました。

    今回も同じ法改正シリーズですが、注目するのは「建物」ではなく「土地」です。
    世界にも例を見ない少子高齢化社会の日本において、所有者不明土地の増加が社会問題となっています。

    それを受けて令和2年~3年にかけては、

    ・土地基本法等の一部改正

    ・所有者不明土地の問題を解決するための関連法成立

    といったように、土地の活用や所有者の明示に向けての法整備が着々と進んでいます。

    最近になって「所有者不明土地」という単語を耳にすることが増えたように感じますが、実際にどのような問題が存在しているのか、その背後にはどのような社会情勢があるのか、といった点も踏まえながらご説明いたします。

    初回である今月は、「所有者不明土地」の現状についてお伝えいたします。

    目次

    九州の面積以上存在するって本当?

    平成30年の1月、所有者不明土地問題研究会が発表した報告書が話題になりました。内容を端的に述べると

    国内の所有者不明土地は九州の面積以上存在すると推計される

    というものです。

    その面積は約410万ヘクタール、割合にして国土の20%以上が所有者不明土地であると言うのです。

    しかし後述しますが、そんなに多くは存在しません。

    そもそも所有者不明土地の定義とは

    それを説明するために、前述の研究会が参考データとして用いた国土交通省の地籍調査について見ていきます。

    国交省のHPによると地籍調査とは、「一筆ごとの所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査」との説明がされています。

    この調査のためには、各筆の土地の最新の所有者にコンタクトを取る必要があるため、登記されている土地について「登記簿謄本で所有者にたどり着けた」「登記簿謄本単体では分からなかった」「最後まで所有者が分からなかった」といった形で分類することができるのです。

    平成28年に実施した地籍調査の結果をまとめた報告書によると、登記されている土地のうち登記簿上の情報で所有者の所在が確認できなかった土地は全体の約20%となっています。

    国土交通省、『所有者不明土地の実態把握の状況について』、P2https://www.mlit.go.jp/common/001201304.pdf

    この数字が、「所有者不明土地問題研究会」による所有者不明土地の推計に使われた数字になります。

    そのため最初にお伝えした推計について言い換えると、「登記簿謄本の情報だけでは最新の所有者にたどり着けない土地が九州の面積以上存在していると推計される」ということになります。

    ただ、その20%について相続や売買、住所変更など追跡が可能だったものを除いていくと、「最終的に所在不明」となったのは全体の0.4%となっています。

    本当の意味での「所在不明土地」は、九州の面積ほど存在しない。
    そのほとんどは本来登記すべき「相続」や「住所移転」に際して変更登記を行っていないことを理由に発生している。

    そして特にこの相続登記の未了について、日本政府は大きく問題視をしています。

    義務化されていない所有権登記

    超少子高齢化社会を迎える日本にとって、相続登記の未了は大きな問題となります。

    登記しなくても違法じゃないの?

    不動産の売買を行う投資家の方々にとっては、所有権の変更登記をしないということについて強い違和感を抱かれるかもしれません。
    しかし民法や不動産登記法において義務化されているのは「表題登記」のみであり、所有権登記は義務化されていないのです。

    そもそも登記とは、あくまで「第三者に対する対抗要件」として用いられるものです。

    相続の場合は、被相続人(もともとの物件所有者)が死亡しているため、

    • 第三者に対して勝手に所有権を移転する心配がない
    • 法定相続分の範囲においては相続登記がない場合でも第三者に対抗できる

    といったように、わざわざ移転登記を行わなくても権利の主張ができる場合が多いのです。その結果として登記が後回しにされたまま忘れ去られてしまうケースや、遺産分割協議がまとまらないがために放置されているようなケースがよく見られます。(中には登録免許税の支払いを嫌って意図的に登記しないケースも多々あると言います)

    最後の所有権登記から何年経過したか

    このことを問題視した法務省は、平成29年6月に全国10か所の地区で相続登記が未了となっている恐れのある土地の調査を行いました。

    その結果を見てみると、最後に所有権の登記がされてから50年以上経過しているものの割合

    • 大都市で6.6%
    • それ以外で26.6%

    も存在しているといいます。

    なかには中小都市や中山間地域を中心に、最後の登記から90年以上が経過しているケースも多くあります。

    法務省民事省、『不動産登記簿における相続登記未了土地調査について』、平成29年6月6日http://www.moj.go.jp/content/001226185.pdf

    当然のことですが、最後の登記から時間が経てば経つほど所有者にたどり着く難易度は高くなります。

    今回のまとめ

    所有者不明土地の増加は、探索、手続のコスト・災害時などの用地取得が困難になるリスク・税の滞納といったように、様々な問題を生み出します。

    このような流れのなかで、所有者不明土地を改善するための法改正が求められることとなったのです。


    今回は増加する所有者不明土地の現状について見てきました。

    表面的に見ると「空き地の増加」という簡単な言葉で説明ができるこの問題ですが、その背後には相続であったり、不動産登記の立ち位置であったり、様々な要因が重なり合っています。

    次回は、所有者不明土地問題の解決のためにどのような動きがあるのか、法改正の具体的な内容について見ていきます。

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